
淡路洲本の三熊山、むかしむかしにお城山とよばれていころ、お城山には芝居のめっぽう好きな芝衛門というちょいと変わったたぬきが住んでいた。
その愛すべきわれらが芝衛門、芝居がかかると、なんとも上手に村人にばけ、山をくだって、あっちの村へ、こっちの村へ、くちぶえふいてでかけていった。
ある日、お侍さんにばけた芝衛門、なんとなんと、海をわたって芝居の本場、大阪浪花までいったとさ。
淡路では得意顔の芝衛門も、さすがにおろおろ、きょろきょろしとったら、あったあった、道頓堀の川ぞいに、どーんとそびえる中座があった。
夢にまで見た道頓堀の中座前。
ふくらむ期待をおさえつつ、ふところからこっそりとりだしたのは1枚のはっぱ。
とくいのわざで木戸銭にかえ、すました顔で中座にはいった。
はいっておどろいたのなんのって。
広い舞台に豪華な衣装。そしてなんてったって初代片岡仁左衛門の名役者ぶり!
芝衛門、すっかりとっぷり仁左衛門のとりこになったとさ。
とりこになった芝衛門、暇さえあればいそいそと、海をわたってうきうきと、浪花の中座に通いづめ。
さーぁ今日もと中座の前で看板見上げた芝衛門。
そこを通りかかったいっぴきの犬。 こいつがめっぽう鼻のきく、ちょいと名の知れた犬だった。
芝衛門、あっと思った時にはもう遅い。
たちまち犬に噛みつかれ、あれよあれよと元のたぬきにもどってしまった。
そこで道頓堀は大騒ぎ。犬も役者も通行人も、突然あらわれたたぬきを追っかけまわすわ、噛みつくわ。
とうとう芝衛門は動かなくなってしまった。
これにて一件落着〜!役者の真似して大声で、道頓堀で声張り上げる人もいたとかいないとか。
ところがどっこい、不思議なことに、中座はその日からぜんぜんお客が入らない。ぱったりすっかり閑古鳥。
もちろん仁左衛門の人気もぱったりすっかりすってんてん。
困った中座の人達の、頭にひらめくものはただひとつ。
そうだ、あのたぬき! あのたぬきこそ芝居好きで有名だった淡路洲本の芝衛門!
これはえらいこっちゃとさっそく芝居の神様として手厚くおまつりしてみたら、千客万来、大入満員。中座はもとのにぎわいに。
それからずっと、中座では、お芝居好きの芝衛門、人気の神様として役者たちから厚く信仰されたとさ。
そうやって、われらが愛すべき芝衛門、かの地で伝説としてずっとず〜っと語りつがれてゆくのでした。
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人気運が上がる神様
【芝右衛門】

中座4Fにはシバエモンの
ご神体が祀られています。 |